IndexNo.09比較・転職の実務
事業会社の新規事業担当とコンサルは何が違うか。両方の側にいた私の実感
事業会社で新規事業をしていた頃、外のコンサルに助けられたこと
前職の大手日系IT企業では、ジョブローテで営業や企画を経験し、新規事業も担当した。そのとき、外部のコンサルと一緒に仕事をしたことがある。
当時の私たちには、スキルや経験が足りない部分が多かった。特に、スタートアップとの接し方、スタートアップをどれだけ知っているか、スタートアップと組んで検証する計画の立て方と進め方。ここはコンサルに助けられた。こちらのやりたいことを親身に聞いたうえで、次にどう動くべきかを示してくれた。
物足りなさもあった。一部のメンバーは、なかなか親身に相談に乗ってくれなかった。いくつもあるクライアントのうちの1つ、という扱いを受けている印象だった。
同じ「新規事業」でも、一番違うのは強度
その後コンサルに移り、両方の側で新規事業に関わってきた。事業会社の新規事業担当とコンサルで一番違うと感じるのは、強度だ。もちろん事業会社にもそうではない人はいる。そのうえで、差はかなり大きい。
事業会社の新規事業担当は、良くも悪くもジョブローテの一環であることが多い。配属された仕事の一つとして担当している形になりやすく、最後は自分が引き受けるという責任感(ラストマンシップ)が、そこまで強くないこともある。
責任感が強い人でも、数年に一度の異動は避けられない。担当者が替わると、その人の想いや強度、それまで積み上げてきた事業の経緯が引き継がれないことがある。私自身も、前職ではジョブローテで部署を移る側にいた。
新しい事業は、形になるまでに年単位の時間がかかることが多い。担当の交代はその途中で起きやすく、事業会社の新規事業が続きにくい理由の一つはここにあると思料する。
コンサルに移って、最初の3か月で戸惑ったこと
事業会社からコンサルに移って、最初の3か月で戸惑ったことは3つあった。
1つ目は、質とスピード。前職より数段高い質とスピードを求められ、最初はついていくので必死だった。営業から提案、クロージング、その後の運用まで自分でやる。経営に近いところにも関わるので、いろいろな頭の使い方と、働く体力が求められた。
2つ目は、相手のことを相手以上に知ること。前職でも意識はしていたが、求められるレベルが違った。相手が話すことだけでなく、その背景に何が隠れているかを類推して、判断や示唆出しにつなげる。言われたことを鵜呑みにせず、相手の近況や課題を探りにいく。相手に興味を持てるか、そもそも知的好奇心があるかが問われた。
3つ目は、業務の細部まで気を配ること。資料なら、なぜその書き方をするのか、なぜその色を使うのかまで、一つひとつ意味づけする。考えずに書いているとツッコミが入る。資料は自分の考えや、相手の背景まで全部を反映したもので、きれいに作れば終わりではなかった。資料の話は1年目で一番きつかったことにも書いた。
支援される側にいた経験は、コンサルでも使える
コンサルに入った直後、自分用にメモを書いた。同じ失敗を繰り返さないこと。相手以上に相手のことを考えること。きちんと価値を与えられているか確認すること。相手が気づいていない示唆を出すこと。
事業会社の側で物足りなかったのは、いくつもあるクライアントのうちの1つとして扱われたことだった。メモの2つ目と3つ目は、その裏返しに近い。
事業会社での経験で、もう一つ役立ったことがある。大企業ならではの社内政治や、ロジックだけでは動かない実態を知っていたことだ。クライアントが大企業の場合、内部事情を知らないまま正論をぶつけても相手は動かない。相手が動きやすいようにこちらから誘導するクセは、前職でついた。
一方で、大企業では専門性が身につきにくい場合があるので、その点は意識してキャリアを組み立てる必要がある。この点はジョブローテで身についたもの、つかなかったものに詳しく書いた。
新規事業担当からコンサルを受けるときの準備
私の転職活動は半年ほど。応募は数社で、面接まで進んだのは2社だった。事前にエージェントと話して、どの業界・業種・職種に当たるかを絞り込めていたので、受けた数は多くない。働きながらの転職活動は、かなりパワーがいる。
面接対策で一番効いたのは、自分の業務の棚卸しだ。長所や短所は、自分では気づいていないことが多い。エージェントに手伝ってもらって長所と短所を確認し直し、それをもとに面接に臨んだ。面談では「泥臭くやってきた」と評価され、コンサルワークができる素養が高いとも言われた。それを自分の長所として意識したのは、後になってからだ。
選考では「あなたが一番自慢できることは何か」と聞かれた。新規事業の仕事は、結果が出る前に担当を離れることもある。それでも、結果が出たものでもプロセスが良かったものでもよい。自分では当たり前だと思っていたことが、外から見ると価値があることは多い。
エージェントは、少なくとも5人以上に会っておきたい。私が「この人は合う」と感じたのは、自分のことを自分以上に知ろうとしてくれているのが、オンラインの面談で分かったときだった。合わないと感じたのは、仕事をこなしている感じが伝わってきたとき。転職は人生がかかっているので、親身になってくれるかどうかで選んでいいと思う。使い分けの考え方はコンサル転職エージェントの用途分けにまとめた。
こういう人には事業会社の新規事業、こういう人にはコンサル
どちらが上という話ではない。事業会社の新規事業は、自社の事業や組織の中で新しいものを育てたい人に向くと想定する。ただ、異動で担当が替わる可能性は最初から織り込んでおいた方がいい。
コンサルは、体系的なスキルを身につけたい人に向く。私はVC・スタートアップ・事業会社・コンサルで迷い、体系的なスキルが一番つきそうだという理由でコンサルを選んだ。将来の独立を考えていたので、スキルがつくかどうかは大きな判断材料だった。仕事の強度は高いので、知的好奇心があるかどうかで合う合わないが分かれる。合わないのは悪いことではなく、居場所の問題だと思っている。
支援していると自分で事業をしたくなり、事業をしているとまた支援もしたくなる。コンサルのあるあるだ。私は事業会社側とコンサル側の両方を経験できていることを、とても良いと思っている。
支援される側にいたときも支援する側にいる今も、相手に親身になれるかどうかを大事にしている。